● いわき湯本温泉も例外なくの震災の影響を
さて、其のいわき湯本ですが、一般に湯本温泉に来る観光客は、勿論、まずは温泉であり、その後は近隣のスパリゾートハワイアンズやいわき市石炭・化石館ほるる、其れに隣町の白水阿弥陀堂があり、其処で遊覧や観光を行うのが通例です。 更に宿泊の翌日は小名浜港などに行って、そこの埠頭の水族館や物産センターで魚介類を購入され、自宅に戻るという旅行のパターンが多かったのが、いわき湯本温泉でした。
そして震災による被害で湯本の温泉街や町自体は海岸部に比べると直接的には大した被害ではなかったが、それでも地震の影響で水道、ガス、電気などのライフラインが一時停止して、各旅館では建物が一部損壊、飲食店や一般住宅にも被害が及びました。 又、肝心な温泉水の配管の亀裂によって温泉の配湯が止まるなど混乱は大きいものでした。
、その後は原発事故による住民の避難、観光客の激減、震災関連の作業員の宿泊と撤収など、温泉街の様子を大きく変えるものでした。 震災によって旅館・ホテルに直接被害があっただけでなく、原発事故による住民の避難は営業そのものを困難にしました。 さらに、営業の再開にめどがついた後も観光客が戻らない状況のなかで、ただ国からの休業補償や多くの原発事故の復旧作業員が宿泊の定宿施設として利用することで一時的な収入が得られたものの、温泉街を中心とした街づくりはより困難なものとなっていたともいわれています。
又、その後の福島第一原発の津波による事故では、建屋の水素爆発や炉心溶融による危機などがあり、放射能の影響が住民を不安にさせ、高濃度汚染水が海に放出されたこともあって、風評被害当をも含めても放射能との長い闘いが始まることになります。
今までは当たり前のように温泉街の多くの旅館は、小名浜港から直送される海産物を使った料理が目玉でしたが、原発事故を契機にそれを売りにすることは難しくなってしまいました。
● 震災後の湯本温泉街の宿泊関連、
その後の湯本温泉街の旅館やホテルは、震災や原発事故の復興作業員を受け入れるようになりました。 作業員は主に原発作業員、除染作業員、震災復旧工事作業員等で構成され、それらの人員は2000から3000人のも達し、旅館、ホテルは連日満室の状態となり、売り上げが震災前の2倍になるところもあったともいわれています。
特に、飲食店関係では食堂やスナックや居酒屋は、炭鉱が栄えた時代をほうふつとさせるような大変なにぎわいであり、所謂、町内では「復興バブル」の状況が2年近くつづいたともされています。 この様なことで、一部の人たちからは街の風紀を気にする声もありましたが、ただ温泉街で復興作業員を受け入れたことで、原発事故収束のためにも大きく貢献したともされているのです。
そんな中で、一方では湯本温泉ならではのイベントや祭りも盛んに行なわれるようになっていて、金刀比羅神社の例大祭(1月)、温泉神社の例大祭(5月)、いわき湯本温泉夏まつり(8月)、じゃんがら念仏踊り(8月)、いわき湯本温泉月まつり(10月)等が例年通り開催されています。 また、2016年度封切りの映画、『超高速! 参勤交代』(本木克英監督、佐々木蔵之介・深田恭子主演)の舞台となった温泉地郊外にあった湯長谷藩(現在の福島県いわき市常磐下湯長谷町家中跡)に因んだイベントも取り組まれていました。
以上のようにある旅館の主人は、いわき湯本温泉では、これまでだれも経験したことのない原子力発電所の災害からの復興と再生という、明らかに困難な課題に今後も引き続き取り組もうとしています。 その課題の解決がむずかしいほど、そこに暮らす人びとの「まち」への愛着や誇りが糧となって、ユニークな経営や実践が生まれ続けるに違いありません。 今こそ、日本のどこにもない、世界でもまれな温泉街を生み出す好機と考えて、「ないもの探しをやめて、あるものを磨く」地域づくりの基本にじっくり取り組んでほしいと思います、と語っている。
● 老舗旅館の「古滝屋」と考証館
ところで、湯本温泉街の中でも天王崎という中心地に有って老舗旅館ともいわれる「古滝屋」では、東京電力福島第1原発事故を伝えるための「原子力災害・考証館」というのを、館内の一部を開放してオープンしたという。 展示数は凡そ100点の資料で、、宿泊者は当然としてもお客さん以外も館内に入って無料で見学できるそうです。
考証館は、震災と原発事故で館内を利用する客数が減り、従って、使われなくなった宴会場を利用して行なわれているもので、展示の内容としては防護服を着用して行方不明者を捜索する住民の写真や、津波に巻き込まれた同県内の大熊町の女児の遺品などが並んでいる。 又、住民が起こした裁判の記録、原発事故の関連書類等も展示されている。
これ等の資料は旅館の当主である里見氏が被災した住民らと協力して集めたもので、たまたま原子炉建屋の水素爆発が起きた日に合わせて開館したともいわれている。 里見氏は「原子力災害で古里でもある地域の歴史や文化、営みが喪失したのである。 エネルギー問題は東京や福島だけでなく全国の課題でもある。 『己自身のこと』と自覚しながら見に来てほしい」と話している。
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